体重を落としたあと、少しずつ戻ってしまう。そんな経験があると、「自分には続ける力がない」と思うかもしれません。でも、長く追った研究を見ると、減らした体重を保つこと自体が、簡単ではないと分かります。
5年後、減らした体重はどうなったか
2001年に発表された研究は、米国の29研究をまとめ、減量プログラムの終了後、2〜5年の体重の変化を調べました。対象は、決まった減量プログラムに参加した人たちです。誰もが同じ食事をしたわけではなく、全員が同じ期間追跡されたわけでもありません。
研究をまとめて見ると、最初に減らした体重のうち、2年後に保てていたのは約4割、5年後には約2割でした。つまり、減らした分の約半分が2年で、約8割が5年で戻った計算です。「5年で約8割戻る」という話は、元の体重の8割が増えたという意味ではありません。最初に減らした分のうちの割合です。
この数字も、参加者全員が元の体重に戻ったという意味ではありません。5年後も、平均では減量前より軽い状態を保っていました。個人差もあります。
たとえば、体重を減らす前を「出発点」、減量を終えたときを「いったん着いた場所」と考えてみてください。そこから少し戻ったとしても、必ず出発点まで戻ったわけではありません。本文の割合は、最初に減らした分のうち、どれほど残っていたかを示すものです。「減量した人の何割が失敗したか」を数えた数字ではないのです。
Q. 「5年後に約8割戻った」なら、ほとんどの人が元の体重より重くなったのですか?
A. いいえ。その言い方では、何に対する8割かが抜けています。対象は、最初に減らした体重の量です。たとえば、減らした分を一本の線として描き、その線のどれだけが後に残ったかを見るイメージです。研究では平均すると、5年後も減量前より軽い状態でした。誰がどこまで戻ったかという個人の経過までは、この平均だけでは分かりません。
なぜ、保つことは難しいのでしょうか
減量中には、食べる量や体を動かす量をいつもより意識します。目標に達して生活が元に戻れば、体重も戻りやすくなります。それに、減量後の体には食欲やエネルギーの使い方の変化が起こりうるため、元の体重へ引き戻されるように感じる方もいます。
ただし、この29研究をまとめた解析だけで、リバウンドの理由を一つに決めることはできません。体重が戻ることを「本人の意志が弱い」と片づけるのも違います。続けやすさには、仕事や家族の時間、食べる環境、体の変化など、いくつもの事情が関わります。
ここで大事なのは、「戻りやすいのだから、減らしても無駄」と考えないことです。最初に減らした分がすべて失われたわけではありませんし、維持しやすくする手がかりも研究にあります。
目標に向けて特別なことをしていた時期と、いつもの暮らしに戻ったあとは、過ごし方が違います。たとえば、休暇中に片づけた部屋も、日常の片づけ方が決まっていなければ、少しずつ物が増えます。体重も、減らす期間だけの方法では、その後の毎日に残しにくいかもしれません。これは誰かを責めるためのたとえではなく、始めるときから維持する暮らしを考えるためのものです。
Q. 戻り始めたら、これまでの努力は失敗ですか?
A. そう決める必要はありません。研究では、平均として減量前より軽い状態を保っていたこともお伝えしました。戻り始めたことに気づけば、どの習慣が続いて、どの習慣が難しかったかを振り返れます。記録は、責任を追及する帳簿ではなく、暮らしの変化に気づくためのメモだと思ってください。
運動を続けた人には、違いがあった
同じ解析のうち、運動量と体重維持を比べられた研究では、運動量の多い群のほうが、減らした体重を多く保っていました。これは、運動をすれば誰でも必ず維持できる、という証明ではありません。運動を続けられる人には、ほかの生活習慣の違いもあるかもしれません。それでも、「体重を落としたあとの暮らし」が大切だと考える手がかりになります。
食事を極端に減らして短期間だけ頑張る方法は、終えたあとの生活につなげにくいものです。筋肉を落とさないよう、食事だけに頼らず体を動かすことも考えてみてください。体重を時々記録すれば、増え始めに早く気づけます。記録は自分を責めるためではなく、変化を知るための道具です。
Q. 運動量の多い群の結果は、「運動だけ」で維持できる証拠ですか?
A. そこまでは言えません。同じ解析の中で運動量と維持の関係が見られた、という結果です。運動を続けられる人は、食事や生活の組み立て方も違うかもしれません。運動の意味を小さく見る必要はありませんが、一つの習慣だけが結果を決めたと読むのも早すぎます。
たとえば、休日だけ長く動く計画より、仕事のある日にもできる体の動かし方のほうが、その人には続けやすいかもしれません。どの方法が合うかは暮らしによります。この記事の「運動を続けた人」という言葉を、特別な運動を毎日しなければならない、という指示に置き換えないでください。
「終わったあと」を先に考える
減量を始めるとき、つい「いつまでに何キロ落とすか」に目が向きます。けれど、本当に長いのは、そのあとの毎日です。目標を達成した日にも続けられる食事や運動を選ぶほうが、暮らしに残ります。
リバウンドが起きたとしても、それまでの努力が無意味になったわけではありません。何が続けやすく、何が難しかったかを確かめ、やり方を調整できます。短い勝負で終わらせず、続けられる形を探すことが、体重を保つための出発点です。
減量を「試験勉強」、維持を「そのあとも使う知識」にたとえると、目標日にだけ通用する方法と、毎日に残る方法の違いが見えてきます。急に厳しくした食事が終わったあと、どんな夕食なら続けられるでしょうか。運動や体重の記録は、忙しい週にも残せるでしょうか。始める前にこう問いかけると、目標までの道筋と、その先の暮らしを一緒に考えられます。
Q. 記録した数字が増えると、落ち込んでしまいます。それでも記録すべきですか?
A. 記録は、自分を責めるためのものではありません。数字を見たあと、何が変わったかを落ち着いて振り返るための道具です。毎回の増減を採点するように見るより、続けやすい行動を探す手がかりとして使ってください。記録のしかたも、あなたの暮らしに合う形を考えられます。
大切なのは、減らしたあとも食事や体を動かす習慣を続けられるかです。体重が少し戻ることを、意志の弱さという一語で説明しないでください。研究の平均値は、維持の難しさを知る材料です。その材料を、次の一歩を考えるために使いましょう。
Q. 続けられる方法は、どう考えればよいですか?
A. 減量中だけできる行動か、目標に達したあともできる行動かを、自分の一週間に当てはめてみてください。仕事が忙しい日、家族と食事をする日、予定のない日では、同じ計画が無理なく続くとは限りません。たとえば、平日は実行できない運動を前提にするより、普段の生活にも残せる体の動かし方を探すという考え方です。どれが合うかは、本人の暮らしを見なければ決められません。
Q. 目標体重に着いたら、記録をやめてもよいのでしょうか?
A. この研究だけから、全員に同じ記録の続け方を決めることはできません。ただ、本文で触れたように、体重を時々記録すれば、増え始めに気づく手がかりになります。毎日の数字を採点するより、暮らしが変わったときに自分の状態を確かめる道具として考えてください。
維持の話では、「元に戻ったか、戻らなかったか」の二択にしがちです。しかし、元の体重より軽い状態を保ちながら少し戻った人もいますし、個人の経過は平均値だけでは分かりません。研究の割合は、先の暮らしを考えるための目印です。あなたの努力に点数をつける数字ではありません。
もし始めた方法が続かなかったとしても、そこで終わりと決める必要はありません。どこで負担が大きくなったか、どの動きなら残せたかを見直すことができます。減らす期間の先に長い毎日があることを、最初から計画に入れておきましょう。
今日のまとめ
- 2001年に発表された米国29研究の解析では、減らした体重の約半分が2年後、約8割が5年後に戻りました。
- 「約8割」は、最初に減らした分に対する割合です。全員が元の体重に戻ったという意味ではありません。
- 運動量が多い群は、少ない群より減量を保てていました。ただし、運動だけの因果効果とまでは言えません。
- 意志の強さを責めるより、記録や体を動かす習慣も含め、長く続けられる方法を選ぶことが大切です。
出典
- Anderson JW, et al. “Long-term weight-loss maintenance: a meta-analysis of US studies.” American Journal of Clinical Nutrition, 2001年。米国29研究の解析で、減量後2年には減量分の44%、5年には21%を維持。運動量を比較できた研究では、運動量の多い群の維持率が高かった(PMID: 11684524)。PubMed/原著
この記事は、健康に関する一般的な情報をお伝えするものです。診断や治療を目的としたものではありません。気になる症状のある方、治療中の方は、かかりつけの医師にご相談ください。