あなたは「肥満」ですか?
あ、手は挙げないでいいです(笑)
肥満とは何か。体脂肪が、正常より多い状態のことを言います。
ここ、大事なところです。体重が重いこと、イコール肥満ではありません。
目安は、体脂肪率が男性で25パーセント以上、女性で30パーセント以上。
ところが、この体脂肪率というのは、正確に測るのが難しいんです。
そこで、身長と体重という、誰でも分かるもので代わりに見よう、というのが、BMIです。
日本では、BMIが25以上を肥満と呼んでいます。日本肥満学会が1999年に決めた基準です。
ちなみに、BMIが25以上の方は、男性で31.5パーセント、女性で21.1パーセントです(令和5年 国民健康・栄養調査、20歳以上)。男性は、およそ3人に1人ということになります。
BMIを出してみましょう

試しに私のBMIを出してみましょうか。
計算のしかたは、体重を、身長かける身長で、割ります。
このとき、身長はセンチではなく、メートルで入れてください。
私は身長が170センチなので、1.7です。
体重が61キロ、身長が170センチなら、61わる1.7、わる1.7。答えは21.1くらいですね。
体重は、だいたいで構いません。正確でなくても大丈夫です。
あなたのBMIはいかがですか?
目安をお伝えします。
- 18.5より下が、やせ
- 18.5から25までが、普通体重
- 25以上が、さきほど申し上げた肥満
そして、いちばん病気になりにくいとされているのが、22。これを健康体重と呼びます。
ここで、ひとつ申し上げておきたいことがあります。
低いほうが良い、という話ではありません。
18.5を下回る、痩せすぎのほうにも問題があります。
無理なダイエットを繰り返すと、筋肉が減って、かえって体脂肪の割合が増えてしまいます。
女性の場合は、貧血やめまい、生理不順、それから骨粗しょう症にもつながります。
実際、日本では20代30代の女性の、およそ5人に1人が、この18.5を下回っています(令和5年 国民健康・栄養調査、20.2パーセント)。
ですので、目指すのは「軽いこと」ではなく、22のあたり、ということになります。
「肥満」と「肥満症」
肥満の考え方として「肥満」と「肥満症」というのがあります。
「肥満」はただ太っているだけの状態で、特に健康面での問題はありません。
問題は「肥満症」です。肥満症は立派な病気なのです。
何が違うか。
肥満のうち、ひとつ、すでに体に不具合が出ている。ふたつ、内臓に脂肪がついている。
このどちらかがあると、「肥満症」になります。
つまり、減らすことが治療になる状態、ということです。
この「体の不具合」というのは、具体的に決まっています。
たとえば、高血圧。糖尿病。脂質異常症。
それから、脳梗塞も、この中に入っています。
もう一度整理します。
肥満は、体脂肪が多いという状態。判定はBMI25以上。減量は、必ずしも必要ではありません。
肥満症は、治療が必要な病気。肥満に加えて、健康障害があるか、内臓脂肪型肥満であるか。減量が、治療として必要になります。
なお2022年の改訂で、BMIが35以上の場合は「高度肥満」「高度肥満症」として、別の区分になりました。
なぜ肥満が増えてきたか
日本肥満学会が、公式にこう言っています。
現代人にとって、肥満や肥満症が自己責任という考え方は誤っており、決して負の印象で捉えられるべきものではありません
学会が挙げている理由は、2つあります。
ひとつは、社会と環境の変化です。
車社会になったこと。コンビニや、手軽な飲食店が増えたこと。働き方。ストレス。
これらは、個人の努力とは関係がありません。
もうひとつは、遺伝の個人差です。
消化や吸収、代謝に関わるホルモンの量や、腸内環境には、人によって差があります。
ですから「食べる量を減らして運動すれば、誰でも同じようにできる」という考え方は、できないということです。
実際、数字にも出ています。
1日の歩数は、この10年で男女とも減っています。
野菜は平均256グラムで、目標の350グラムに届きません(令和5年 国民健康・栄養調査)。
そして、脂質から取るエネルギーの割合。今はおよそ29パーセントです。昭和35年ごろは、およそ10パーセントでした。3倍近くになっています。
(※昭和35年については、当時「脂肪エネルギー比率」という項目自体がありませんでした。国立健康・栄養研究所が公開している当時の数値、1人1日あたり熱量2,095.8キロカロリー・脂肪24.7グラムから私が計算したもので、10.6パーセントになります。公表された数字ではない、ということはお伝えしておきます。)
食べ物が変わり、歩かなくなった。この2つが、同時に起きたわけです。
つまり、あなたの努力が足りないのではなく、そういう時代に生きている、というだけの話なんです。
さらに、肥満症診療ガイドライン2022では、肥満への偏見をなくすことが、正式な項目として掲げられています。
偏見をなくすことが、学会の目標のひとつになっているんです。
痩せていても危ない場合がある
太っている人が危ない、という話ではないんです。
先ほど言った通り、ただの肥満であれば特に病気ではありません。
しかし、「かくれ肥満」という言葉があります。
体重は標準なのに、体脂肪率が高い。およそ10人に1人おられます。
無理なダイエットを繰り返して、筋肉が減り、脂肪が増えた状態です。
ですから、体重が標準の方でも、かくれ肥満の方がいるのです。安心はできません。
この話は、太っている方だけの話ではないんです。
私は倒れるまで、「酒もたばこもやらないから健康だ」と思っていました。
一つの物差しだけで、自分は大丈夫だと決めていたわけです。
体重も同じです。さきほどBMIを出していただきましたが、あれも代わりの物差しでした。
一つの数字だけでは、分からないということです。
危ないのは、どこに付いているか
では、何で見るのか。
脂肪が「どこに」付いているかです。
脂肪には、3つあります。
ひとつ目は、皮下脂肪。皮膚の下に付く脂肪です。
ふたつ目は、内臓脂肪。お腹の中、内臓のまわりに付く脂肪です。
そして3つ目。異所性脂肪。筋肉や臓器につく脂肪です。これは、あとでお話しします。
体型で言うと、内臓脂肪が多いのがリンゴ型。お腹まわりが出るタイプで、男性と、更年期以降の女性に多い。
皮下脂肪が多いのが洋ナシ型。おしりや太ももに付くタイプで、若い女性に多い。

このうち、肥満症に直結して危ないのは、リンゴ型のほうです。
洋ナシ型、つまり皮下脂肪は、健康上のマイナスにはなりにくいと言われています。
見分け方は簡単です。同じ脂肪でも、つまめる脂肪と、つまめない脂肪があります。
危ないのは、つまめないほうです。
目安として、腹囲が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上。これが、内臓脂肪の面積100平方センチに相当します。
「最近、ベルトの穴が一つ増えた」というのは、内臓脂肪型のサインです。

さて、3つ目の脂肪です。
第3の脂肪、と呼ばれています。
これがやっかいなのは、皮下脂肪でも内臓脂肪でもない、本来なら脂肪が入らないはずの場所に入り込むことです。
つまめもしませんし、お腹まわりを測っても分かりません。
この話は、またあらためて書きます。いちばんお伝えしたい話に、つながっていきます。
今日のまとめ
- 肥満は「状態」、肥満症は「病気」。分けて考える
- 肥満が増えたのは、本人の努力の問題ではない。学会がそう言っています
- 体重が標準でも、安心はできない
- 危ないのは、つまめない脂肪のほう
ここまで、太っている状態の話をしてきました。どこに付いているかで、危なさが違う、というところまで、お話ししました。
ただ、ひとつ、飛ばしてきたことがあります。
そもそも、太る、というのは、体の中で何が起きていることなのか。
ここを先に押さえておかないと、このあとの話が、ぜんぶ他人事になります。
この続きは、またあらためて書きます。
出典
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf - 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
https://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-001.html - 国立健康・栄養研究所「国民栄養の現状(昭和35年)」
https://www.nibn.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/1960.html